　Be curious！

　「マイ・オールド・ファッションド・センス」

　たまたま手にした今は無き硬派の雑誌「批評空間」の第２期１９号のページをパラパラとめくっていて、次のような箇所に目が引かれる。この号の共同討議「カントのアクチュアリティ」における柄谷行人の問題提起である。

　「ちょっと話は違いますが、ある現代音楽の作曲家が書いていたけれども、現代音楽だと、専門的に評価はされても、客が来ない。相変わらずクラシックのほうに客が行く。それで、その人がアイロニカルに言うには、人類の五感は、マルクスが言うように世界史的労作かもしれないけれども、だいたい１９世紀の終わりで完成したのではないか、と（笑）。シェーンベルク以降になると、数学で公理を変えて組み立てるというようなものに近くて、悟性では理解できるけれども、感性がついていかない。それはかなり説得的だと思うんです。先ほど共通感覚は相対的だと言ったけれども、必ずしもそうだとは思っていない」

　このことは、私自身、納得のゆくものである。私が、最も心惹かれるのは、１９世紀の芸術スタイルだからである。「現代音楽」のシェーンベルクの有名な「浄夜（浄められた夜）」は、「きれいだな」と思って聴いて、好みの音楽だが、やはり１９世紀の「クラシック」のほうが肌に合う。例えば、「遅れてきたロマン派」と揶揄されることの多いラフマニノフが書くところのメロディが好きなのである（「ピアノ協奏曲第２番」とか「ヴォカリーズ」とか）。

　ラズベリーズのメンバーだったエリック・カルメンが、ラフマニノフのことを尊敬しているという話を最近知ったのだが、それで彼のヒット曲「オール・バイ・マイ・セルフ」の中にラフマニノフの「ピアノ協奏曲第２番」とまったく同じフレーズが登場することに納得がいった。このことからもわかるように、大衆音楽は１９世紀の音楽の枠内にある（ついでに言っておくと「大衆小説」もまた１９世紀に確立されたリアリズム小説の枠内で書かれている）。

　ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第２番」は１９０１年という微妙な世紀の変わり目の年に完成したが、私が好きな作曲家の１人であるドビュッシーもまた微妙な立ち位置にいて、旧体制と新システムの二重性を生きた表現者であった。例えば、松浦寿輝は次のように語っている。

　「この両義性は、ほんの一例を挙げるなら、たとえば、感性的には――つまり文学的主題という面では――抜きがたく象徴主義のデカダンスに傾斜していたドビュッシーの書いた音楽が、音の響きの物質的な組成という点に関するかぎり、ウィーン楽派のセリー音楽を準備し二〇世紀を開く野心的な試みに満ちている、といった二重性として現象しているものである。「スーラを、マラルメとシェーンベルクとの間に位置づけねばならぬ」というアンドレ・シャステルによる見事な定式化を、ここで思い出してみてもよい」（『エッフェル塔試論』）

　「シェーンベルクよりはドビュッシー」という性向に、私の無意識の傾向が顕れているようだ。このことは、絵画についても当てはまる。私が好きなのは、ゴッホやターナーのような近代絵画やロマン派、ジョン・マーティンの崇高の美学である。２０世紀では、ピカソやシャガールまでであり、抽象絵画は基本的に好きではない（ただし、カンディンスキーの「コンポジション」シリーズの中の、運動感溢れるタイプの１枚は例外的に好きである）。デュシャンのようなコンセプチュアル・アートも好きになれない（有名な「泉」は一発芸であろう）。ポロックも、私の感性に引っかかるものを感じはするが、画集まで買う気になれない（かなり前に小学館から出ていたムック「週刊美術館」の「ポロック／ロスコ」の号は持っている。それを見ていてポロックは東洋の「書」の影響を受けたことはあるのかな、と思った）。けれども次のような無視できぬ文章の中にポロックの名を見出す時、「ポロック」という名は、私の記憶から離れそうにない。私の実存の近傍にポロックが位置することを直感する。

　「精神を病んだ者たちに絵を描かせる場合、「常人」におけるようにキャンバスを立ててそれに対面させるかたちで描かせるべきではない、そうではなくてキャンバスを平らに置き、そこに屈み込むようにして描かせるべきである、と、アンリ・マルディネは言う。キャンバスに対面して描くとき、描く者は対象と絵画に対して主体として対面することを要求される。つまり、描く者は多かれ少なかれ安定した主体であることを前提にし、それを要求されることになる。しかし、精神を病んだ人びとはまさに主体であることが維持できないからこそ病者であるのだから、それは彼らにとって即苦行となり、絶望の確認にしかならない。しかし、水平に置かれたキャンバスに屈み込み描く行為は絵の中に、絵を描くことの中に主体を投げ渡し、没入し、「我を失う」ことを許す。そこにおいて病者は「失われてある限りでの我」を見いだすことができるのである、と。セザンヌはむろんキャンバスを水平にして描くことを試みることはない（それはジャクソン・ポロックを待たねばなるまい）。」（丹生谷貴志「茫然自失の中で問うこと」）

　「常人」の側から見れば、意味不明で、時には嘲笑の対象になることもある「ドリッピング」の本質的な意味が解されている。ここで言われている「我を失う」体験は、「共通感覚」の崩壊という事件＝意味の生成のことである。上記の引用部の少し前で、丹生谷は次のようにも書いている。「だから「近代絵画」における真の問題は意味の排除による純粋絵画への生成などではない。そうではなくて、対象と主体との関わりとしてある絵画の発生の場所、ということは意味や情念の発生の場所でもある或る地点へと降りてゆくこと、対象と主体が互いに互いを贈与し合いながら解体し、同時に生成するような場所へと降りてゆくことが問題となるだろう」結局のところ、創造の現場においては、このことしか起こらないのだと思う。「無意味」という意味を得意気に振り回していた８０年代カルチャーが、いかに軽薄でつまらぬものであったかが改めて再認識される。８０年代の（特にサブカル）文化人は、事件の生々しさに触れることはできなかった。それとは逆に事件（意味＝情念）の萌芽を抑圧し、流産させることが、８０年代カルチャーの真の姿であった。あえて弁護するなら、それは致し方なかったとも言える。「すべては終わった」という歴史意識を、８０年代文化人の一握りの良質な部類は彼らの認識の根底に抱えていたからである。そうした部類の１人に、例えば、細野晴臣がいる。

　ちょっと前、CDショップで『TOKYO　CITY　POP　70‘s』というコンピレーションCDをたまたま見かけ、購入したのだが、これは凄かった。1976年前後の楽曲が多く収められているのだが、1977年あたりで、日本のポップ・ミュージックは行くところまで行ってしまっている（もう先はない）という感じなのである（1曲だけベストを挙げるとすると、鈴木茂の「100ワットの恋人」になるが、現在のヒット曲でこれと肩を並べうるものは、ちょっと、見当たらない）。そうした日本のポップ・ミュージックの流れの中心に細野晴臣がいた。「ティン・パン・アレー」というグループ名だけは知っていたが、その音楽活動内容は知らないでいた。自分の「日本のポップ・ミュージック史」に対するあまりの無知さかげんに恥じ入るばかりである。

　『はらいそ』（1978年発表の細野のソロ・アルバム）のレベルまで来てしまうと、あとは「イエロー・マジック・オーケストラ」に行くしかなかったのかなと思う。だが、私には、YMOは肌に合わない。私にとって、YMOはコンセプチュアル・アートだから。YMOナンバーで、私が初めて聴いたのは1979年の「テクノポリス」だった。吃驚したけれど、違和感もあった。私が音楽に求める音楽性（色気）を欠いているように思った。『TOKYO　CITY　POP　70‘s』の中にもこの曲は収められているが、いま聴くと、この曲が最も陳腐に聴こえてしまう。IMOの「ハイスクールララバイ」のほうがいいとすら思う（この曲は、作詞松本隆、作曲細野晴臣であるが、同じコンビによる「君に胸キュン」の先駆けではないだろうか）。

　80年代前半当時における細野への私の不満を書いておくと、当時細野が口にしていた「環境音楽」という言葉が嫌だった。この言葉は、私にとって、当時の殺し文句であった「ニュートラル」と重なり合うものだった。「主体の確立に情熱を傾ける」といった振る舞いを嘲笑しさるために、当時はよく用いられていた。そこそこマシな連中は、「個人や内面というのは、国家と補完し合うものであり、それ自体権力であるからして、そうした二項対立をずらすことが現代的課題なのだ云々」としゃらくさいことをぬかしておった。その連中は、いま、いっさいそうしたことに口を拭って、「日本人も個人を確立するべきだ」などと、涼しい顔をして口にしている。当時「ニュートラル」批判を唯一行っていたのは、柄谷行人であったが、細野もまた、アンチ・ニュートラル的な音楽へのアンテナを張ってはいた。

　小林秀雄の批評を取り上げて「ニュートラルなある原理を示す人だと思うんです」という大江健三郎の発言に対して、柄谷は次のように異議を唱えた。「しかし、そんな単純なイデオロギーも、そんなニュートラルな原理もないことを小林秀雄自身が知っているだろう。それとも構造主義・フォルマリスムの凡庸な「理論」がそうだとでもいうのか。たしかにそれがある時期からの小林秀雄の批評と共通しているのは、何でもあてはまるようにみえるが、何一つ固有性（差異性）を示せないということだ」80年代に潰されまくった「主体」とは、この「固有性（差異性）」のことである。このことは、今もなお、「KY」という言葉を、馬鹿の一つ覚えみたいに振り回す連中によって、行われている。

　一方、細野も「空気」ではなく、空気の温度を変質させるであろう差異の力への渇望を保持していた。「現在、音楽はくさる程つくられているが、三拍子そろったものはあまりない。その三拍子とは、①下半身モヤモヤ②みぞおちワクワク③頭クラクラである。①②はざらにある。①は端的にいえばリズムであり、②は和音、メロディということだが、③はクラクラさせるようなコンセプトである。これはアイディアの領域を越えた内からつきあげてくる衝動のようなものであり、私の最も大事とするもので、これを感じたものには、シャッポを脱いで敬礼する事にしている」

　「コンセプト」という言葉は、80年代の一時期、目敏い広告文化人によって、またしても乱用されていたが、彼らのいう「コンセプト」は「アイディア」であった。彼らは根本的に「アイディアの領域を越えた内からつきあげてくる衝動のようなもの」を欠落させていた。

　ところで80年代の音楽でいうと、当時は「音楽はメロディではなく、サウンドだ」ということがさんざん強調されていたと記憶している。最近「80年代の音楽はメロディがよかった云々」という意見をしばしば耳にして、首をかしげることが多々ある。私の記憶では、メロディを軽視することが、当時の音楽文化のモードであった。それと併行して文学の領域では「物語批判」が頻繁に口にされた。「物語批判＝メロディ軽視」という図式が、当時私の中で出来上がっていた。だから文化的に（ということは実存的に）居心地の悪い思いをずっとしていたのである。ただし付言しておくと、私が欲していたのは「切れば血の出る物語」であり、「切れば血の出るメロディ」であった。「物語批判」にしたって、「メロディ軽視」にしたって、60年代のジャズ・ミュージシャンがコミットした「コードの破壊」とは以て非なるものであった。60年代ラディカリズムは嘲笑されていたのである（だから「ニュートラル」となる）。以前ラジオでジャズの特集番組を聴いていたら、解説のジャズ評論家が「80年代にはジョン・コルトレーンのようなスピリチュアルなジャズは嫌われていた。最近になってようやくコルトレーンは評価されるようになった」と語っていた。

　もちろん80年代にもメロディはあった。けれども、それらのほとんどは70年代の水準に達していなかった。「安全地帯」のような例外的なメロディメーカーもいたが、「安全地帯」にしたって、デビュー当時はさんざん「クサい」と揶揄されていたのである。1986年ごろ「東南西北」を聴いた時は、彼らの音楽の孤立ぶりに「おやっ？」と思った。時代とは真逆にメロディを前面に押し出していたのである。新聞のインタビューで「僕らは古臭いんです」と自嘲的に語っていた。「東南西北」は、あっという間に消えてしまった。

　「東南西北」の次に「切れば血の出るメロディ」の匂いを感じたのは、1992年ごろ「ミスター・チルドレン」と「LR」が揃って登場したときである（同時期、音楽でメロディが復活するように、文学で物語が復活する）。どちらもチョコレートパフェにあんこがのっているような甘さを湛えていたが、そうした印象の背後に、したたかな背骨を隠し持っているような印象があった。「確信犯」の棘のようなものが、彼らの作品からは感じられた。彼らのデビュー当時の時点では、「LR」の「（I Wanna） Be with You」により多く「確信犯」の棘を感じたので、私は「LR」に軍配を挙げた。1993年に「ミスチル」は大傑作「クロス・ロード」を出して、あっという間に巨大化する。彼らのほかにも、この近辺では、高野寛やフリッパーズ・ギターなど、重要なアーチストが登場するが、話が長くなるので、名前だけの言及ということにしておく。彼らより少し前（1987年）、「パール」が登場した時は、かなり吃驚した。70年代正統派ロックだったのである。墓場からゾンビが這い出してきたような、痛いほどの懐かしさがあった。

　「ゾンビ」という言葉が登場したが、80年代中期というのは「ジェイムズ・ジョイスは文学の墓掘り人である」というような言い方に象徴される、表現に対する過酷な歴史意識が、ごく当然の前提としてあった（ようやく本題に戻った）。例えば、1985年には『映画はいかにして死ぬか』（蓮実重彦）、1986年には『まだ死ねずにいる文学のために』（安原顕）のような本が出版された。私の世代の一部は、幸か不幸か、彼らによって啓蒙されていて、安易な態度で表現に向かうことのできない意識を持たされている。それはまあ、彼らの言説の中には、調子に乗って失言するタレントのような軽薄な挑発性も含まれているのだろうが、「間近に迫った映画の死を声高に触れてまわったりはせず、その事実を見つめながら、しかも、いっときの興奮で現実を忘却するのではなく、死を抱え込んだ映画の現在を誠実に生きること。誰もがゴダールではない以上、これが現代の映画作家の最低限の慎みでしょう」（『映画はいかにして死ぬか』）という態度は、絶対に手放すべきではないという覚悟として、私の中にこれはもう否応なくある。同じ書物の中では「50年代に壊れ始めたアメリカ映画をそれ以前からずっと見て育ってしまっており、それ以後のひどいアメリカ映画もやはり「ひどい、ひどい」と言いながらも見続けている者でもあるわけです。そのひどさの根拠は、やはり、失われたものにしかるべき供養をしていないということですね。それは、アメリカ映画が50年代に崩れたならば、それに対する供養を誰も本気でしないでいることからくる弱点です」という言葉も読まれる。

　「その本気の供養」は、8年後、『ハリウッド映画史講義』として結実した。「映画の歴史が、光と輝きに対する感性によって書かれるというにとどまらず、影と暗さに対する感性によっても書かれうるものだという事実」に基づき、「翳りの歴史」を擁護することを目指した書物である。だから一貫して次のようなトーンによって支えられている。「陶酔へと誘うものではなく、たえざる覚醒へと導く不幸な対象としての映画。人びとは、五〇年代作家たちとともに、映画には歴史があり、また歴史が映画をつくるというごく当たり前の事実を身をもって学んだのである。そのことに自覚的たりうるものだけが、なお映画を撮り、なお映画を見ることが許されている」そしてまた、この書物の末尾は次のような言葉によって、締めくくられる。

　「この書物が夢みているのは、あらゆるアメリカ映画がたんなるアメリカ映画となりながら、それが、間違ってもアメリカ合衆国にだけは似ないということなのだ。だが、ハリッドの保護から自由になったアメリカ映画が、合衆国に対する孤独な闘いに耐えうるだろうか。「翳りの歴史」に意識的なものだけが、それに耐えうる感性を持っているはずなのだ」

　『ハリウッド映画史講義』については、別の原稿で、改めて取り上げることにする。予想以上にこの原稿が長くなっているので、このへんでまとめにはいろう。最近、漠然と感じていることは、歴史意識＝批評意識が希薄化しているのではないか、ということだ。例えば、「ケータイ小説」やその映画化作品がヒットしてしまう現象の背後には、知性上の怠慢があるのではないか。このことは「サブカル」の最大の弱点である。たぶん、サブカル文化人や広告文化人の多くは、蓮実重彦的な営みを、「KYだ」「わかんなーい」の一言で排除しようとするだろう。けれども蓮見は、「難解さ」ではなく「具体性」しか目指してはいないのだ。「わかりやすい」という言葉を隠れのみにして、「具体性」への感覚を放棄し、「わかりやすいイメージ」という「抽象性」と戯れることの堕落に陥っていない、とはけっして言い切れないだろう。

　創造行為においては、やはりものをいうのは、無意識の力だと思うが、それだけに頼ることのできるのは、ほんの一握りの突出した才能だけだろう。ごくごく平凡な人間が、無防備に「創造」に接近したとしても、パターンをなぞらされるのがオチだろう。私自身は、作品行為は、意識と無意識の中間地帯で生起すると考えるが、歴史を視野の片隅に収めておくことだけでも、作品の奥行きと深さにそれなりの違いがでるのではあるまいか。聡明なクリエーターは、多かれ少なかれ、そのような歴史的態度に自覚的である。

　例えば、音楽では、坂本龍一の名が挙げられよう。聞くところによると、坂本は必聴CD全集を企画しているとのことで、そこにはクラシックからロック、さらには民族音楽など、さまざまなジャンルの音楽がセレクトされるという。そこにはまっとうな音楽史としてもじゅうぶん成立する詳しい解説書も加えられるらしい。かなり期待できる試みといえよう。文学では、松浦寿輝がそうした一人である。詩から小説、さらには文芸評論や映画評論にいたるまで、どのジャンルにおいても、一級の仕事をしている。一人の人間にこんなにも才能が集中してよいものかと、腹立たしさすら感じてしまう。松浦は「生まれてすみません」ぐらいのことは言わなくてはいけないんじゃないだろうか。映画では（このジャンルにはうるさ型のインテリがけっこう多くいるが）、青山真治の名を挙げておこう（彼は立教大学で蓮見の映画の授業を受講していた）。青山の映画とテレビドラマから派生した映画作品を見比べてみれば、その差は歴然としている。昨年、関西テレビ制作のドラマ『アンフェア』の映画版を見た時は、かなり本気で憤りを覚えた（映像ダメ。脚本ダメ。演出ダメ。と三拍子そろっている）。

　と、エラソーなことを書いてきたが、本稿のタイトルにあるとおり、私は「オールド・ファッションド・センス＝19世紀の感覚」に対する退嬰的な執着を手放せそうもない。ただむやみに実感信仰に居直って、懐疑＝批判の回路を閉ざしてしまうことのないよう自戒しよう。五感の実感だけでは「地動説」はとらえられないのだから。悟性を侮ることによって、「天動説」を振り回す愚かな文化的ふるまいが、私たちの文化的基盤の地盤沈下に貢献しないとはかぎらないのである（みずから「地動説」に乗り遅れたことを政治家に責任転嫁してみてもはじまるまい）。

（２００８・２・１３）

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